最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)223号 判決 1953年7月17日
主文
原判決並びに第一審判決中被告人に関する部分を破棄する。
被告人を懲役五月に処する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
弁護人布施辰治の上告趣意について。
所論は、量刑の不当を主張するに帰するもので、刑訴四〇五条所定の適法な上告の理由とならない。
しかしながら、職権を以て審査するに、本件第一審判決は、被告人は昭和二四年二月一日名古屋高等裁判所金沢支部において、常習賭博罪により懲役四月、五年間執行猶予の判決を受け、その後、昭和二七年政令第一一八号減刑令により懲役三月、三年九月の執行猶予に変更せられ、その猶予期間中に本件犯行を犯した事実を認定しながら、同人には右前科があるからとして刑法五六条、五七条を適用して累犯加重の上被告人をその所定刑期範囲内において懲役八月に処したのは刑法五六条の解釈を誤った違法ありというの外なく、右の違法は被告人に対する科刑に影響を及ぼすことは勿論であるから刑訴四一一条一号を適用して、原判決並びに第一審判決を破棄すべきものとする。
しかして、当裁判所は直ちに判決することができると認めるので同四一三条但書に則り、一審判決が証拠により確定した摘示事実に法令を適用すると、判示各所為は刑法二三五条、六〇条に該当し、以上は同四五条前段の併合罪であるから同四七条本文、一〇条に従い最も重いと認める判示第一、(一)の罪に法定の加重をした刑期範囲内において被告人を懲役五月に処すべく、訴訟費用の負担につき刑訴一八一条を適用し、主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)